学校作業療法の実施地域|利用の仕組みと、沖縄・関西での取り組み

「自分の住んでいる地域で、学校作業療法は受けられるのだろうか」

そう思って調べている方も多いかもしれません。

学校作業療法は近年、全国的に広がりを見せていますが、国の制度として統一されたものではなく、実施の仕組みや内容は自治体ごとに異なります。

この記事では、まず全国共通の制度である保育所等訪問支援の仕組みをお伝えした上で、ゆいまわるが実際に学校作業療法を行っている沖縄県・関西圏の事例をご紹介します。

目次

学校作業療法はどこで受けられる?制度のしくみ

学校作業療法は、国が統一的に整備した制度ではありません。

実施の仕組みは自治体ごとに異なり、すべての地域で同じように受けられるわけではないのが現状です。

ただし、全国共通の仕組みとして「保育所等訪問支援」があります。
児童福祉法に基づく福祉サービスで、お住まいの地域に事業所があれば利用できる可能性があります。

利用の流れとしては、このようになります。

  1. お住まいの市町村役場に「保育所等訪問支援」の利用を申請する
  2. 相談支援専門員とサービス利用計画を作成する(またはセルフプランを作成する)
  3. 事業所と契約・面談
  4. 利用開始

一方、自治体が独自に作業療法士の派遣を事業化しているケースもあります。

教育委員会や福祉課からの業務委託という形で、個別のお子さんへの支援にとどまらず、学校・学級全体へのコンサルテーションや研修まで行うことが可能です。

土屋

ゆいまわるが沖縄県内の複数の自治体で実施している「まちOT」は、この形態にあたります。

このほかにも、教育委員会による専門家の直接雇用や、行政予算による外部専門員の派遣といった方法などがあります。

ただ、いずれも訪問の頻度には限界があるのが実情で、定期的・継続的に学校を訪問できる仕組みとしては、保育所等訪問支援か自治体からの業務委託が現実的な選択肢になっています。

なお、海外ではアメリカで作業療法士の約20%が学校に配置されるなど、制度として学校作業療法が定着している国もあります。

沖縄県での学校作業療法と業務委託による実施地域

ゆいまわるは、沖縄県内の複数の自治体から業務委託を受けて学校作業療法を実施しています。

自治体ごとに委託の内容や規模は異なりますが、いずれも地域のニーズに合わせた形で事業が組み立てられています。

南風原町の学校作業療法|地域を耕してたどり着いた包括モデル

南風原小学校での作業療法士による学校での分析の様子
南風原小学校での学校作業療法の様子

南風原町は、ゆいまわるが最初に学校作業療法を始めた場所です。

現在は、教育委員会からの作業療法士派遣委託事業を中心に、こども課からの巡回支援専門員派遣事業、障害福祉課の委託による親子通園事業やペアレントプログラムが組み合わさった包括的な体制になっています。

南風原町内のすべての幼稚園・小学校・中学校に作業療法士が訪問しています。

ただ、この体制は最初から用意されていたわけではありません。

始まりは、ゆいまわる代表の仲間が南風原町の行政担当者との関係を築くところからでした。

土屋

当時、専門家がおらずなかなか人が集まらなかった親子通園事業に参加し、現場のニーズを学んでいくことから一歩ずつ進んでいった形です。

2018年頃からは親子通園の予算を活用して地域の保育園への巡回を開始。同時に、保育所等訪問支援で地域の学校を回りながら、先生たちとの関係を作っていきました。

転機になったのは2020年、コロナ禍です。

公園も学校も封鎖され、子どもたちが活動の場を失う中で、仲間は教育事務所に対して子どもたちへの影響を説明しました。

それが沖縄県全体の教育委員会から発行される文書につながり、全国に配られたコロナ対策予算を活用して作業療法士の巡回事業が動き出すことになります。

このとき決定的だったのは、すでに保育所等訪問支援を通じて先生たちとの信頼関係ができていたこと。

予算がついていざ現場に入った時に、「ゆいまわるさんね、知ってる」という状態だったからこそ、すぐに技術提供を始めることができました。

行政への働きかけと、現場での信頼構築。その両方が重なって、南風原町の委託は実現しています。

南城市・嘉手納町|巡回相談から始める学校作業療法

ゆいまわるの作業療法士による南城市での保育士向け研修の様子
南城市での保育士向け研修の様子

南風原町のような包括的な体制ではなく、巡回相談からスタートした自治体もあります。

南城市では、こども相談課からの業務委託で保育園等の巡回相談を2020年から実施しています。
嘉手納町では、子ども家庭課からの業務委託で2021年から巡回相談支援を行っています。

いずれも南風原町とは事業の規模もスタイルも異なりますが、それは当然のことでもあります。

ゆいまわるの技術セットは、地域のニーズに合わせてカスタマイズされるもの。

研修をセットにすることもあれば、保護者向けのプログラムを組み込むこともあり、何をどう組み合わせるかは自治体ごとに違います。

与那国町の学校作業療法──島のニーズと歩んだ5年間

与那国島でのゆいまわるの作業療法士による学校作業療法の様子
与那国島での作業療法士による学校作業療法の様子

与那国町では、長寿福祉課と教育委員会の両方から業務委託を受けて学校作業療法を実施しています。

本島とは異なり、年に数回の渡航で集中的に行う形態です。

支援の範囲は、5年間で大きく広がりました。

当初は保育所・幼稚園・小学校への巡回からのスタートでしたが、3年目には中学校が加わり、4年目には教員向けの職員研修や親子プログラム、学童への訪問にまで広がっています。

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5年目となる今年度は、通級指導も担うことになりました。

こうした変化は、ゆいまわるが一方的にメニューを持ち込んだ結果ではないのです。

「委託されてありがたいのですが、私たちの目的はこの町のニーズに答えること。まず町がどんなニーズなのかに合わせて技術提供をカスタマイズするので、毎年話し合いや状況を教えていただけますか。」

そう伝えながら、島のみなさまと対話を重ねてきた結果として、形が変わっていきました。

離島ならではの条件もあります。

教具がすぐには手に入らない環境、島の行事で先生たちが出払う日もある暮らし。そうした中で、島の資源やコミュニティの力を前提にした支援のあり方を、毎回考え直しながら進めています。

少人数の島だからこそ、フィードバックの時間に担当の先生以外の先生も参加し、職員研修のような役割を自然に果たすこともある。限られた回数の訪問が、島の暮らしの中でどう生きるかを一緒に考えていく。

それが与那国での学校作業療法の形です。

関西での学校作業療法|保育所等訪問支援から広がる実践

YUIMAWARU KANSAIは、2024年5月に兵庫県西宮市を拠点として活動を開始しました。

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関西では業務委託ではなく、保育所等訪問支援の枠組みで学校に入っています。

現在の活動地域は、西宮市・川西市・伊丹市・宝塚市・芦屋市・尼崎市です。

関西で学校作業療法はどのように広がったか

YUIMAWARY KANSAIの事務所で、学校作業療法の訪問先について話し合う作業療法士の奥川と土屋
YUIMAWARY KANSAIの事務所で、学校作業療法の訪問先について話し合う作業療法士の奥川と土屋

関西でのスタートは、決して順調なものではありませんでした。

多くの学校がすでに保育所等訪問支援を認知していたため、学校に入るときに「いつでも来ていいですよ」とは言ってもらえます。

ただ、先生と話す時間はもらえない。「来てもらう分にはいいけれど、放課後は時間が取れないので…」そんな状態からの出発でした。

それでも、立ち話の中から少しずつ関係を築いていきました。

こちらから「ちょっとだけお話の時間いいですか」と声をかけ、先生たちに興味を持ってもらい、1人の先生から2人、3人と「もっと話を聞きたい」と言っていただくことが増えていったのです。

また、保護者が保護者に口コミしてくれて広がっていったことも大きな力になっています。

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思い出深い学校のひとつは、チックと吃音のあるお子さんのケースでした。

保育所等訪問支援の枠組みで行っていた福祉の会議の中でその子の話をしていたところ、先生から「この内容は学年の先生みんなに知っていて欲しい」という声が上がり、放課後の職員研修が実現しました。

最初は「何なのかしら」という空気で集まった先生たち。

それが、途中から先生同士でひっそり話し始め、やがて初めて聴いた先生たちの方から「この内容は子どもたちも聴いた方がいいんじゃないか」という提案が出ました。

担任の先生は「障害があるから優しくしましょうという話ではなく、みんな何かしらの見えないしんどさがあって、そんな子たちが同じ教室にいるんだということをみんなが知っていた方がいい」そう話してくれました。

結果として、福祉講話の時間を使った1年生200人全体への授業に発展。翌年も依頼がありました。その学年にはもう対象のお子さんがいなかったにもかかわらず、です。

個別のお子さんへの福祉サービスとして始まった関わりが、先生たちの気づきを通じて学校全体の学びに広がっていく。

こうした積み重ねが、関西での学校作業療法の土壌を作っています。

研修を通じた認知の広がりと、これからの課題

広がり方には、研修を通じたつながりも大きく関わっています。

1年目に特別支援教育に関わる先生たちの部会で研修を行ったことで、2年目にはその先生たちが各校の夏休みの研修にゆいまわるを呼んでくれました。

そのときの先生方が覚えていてくださり、初めて福祉で入った学校でも、「あの時のゆいまわるさんですよね」と声をかけてもらえるようなことも。

3年目には、以前関わった先生が異動先で管理職になっていて、「ゆいまわるさんは大丈夫な事業所だから」と現場の先生に伝えてくれる場面もありました。

沖縄の南風原町と同じように、保育所等訪問支援で地域を耕し、信頼関係の中から学校全体への広がりが生まれています。

一方で、関西ならではの課題もあります。

西宮市だけで小学校は40校以上。
一部の学校だけで実施することに対して「不公平では」という行政の声もあり、市全体で動き出すためのハードルは高い。

ただ、2025年に西宮市に幼児教育・保育・小学校教育の連携拠点ができ、そこでの研修にも声がかかるようになりました。

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一歩ずつですが、関西での学校作業療法は確実に根を広げています。

学校作業療法の実施内容は地域によってどう変わるか

制度の入口が違えば、できることの範囲は変わります。

保育所等訪問支援では契約した個別のお子さんへの支援が前提になりますが、業務委託であれば学校・学級全体へのコンサルテーションまで行うことが可能です。

ただ、地域による違いは制度だけの話にとどまりません。

たとえば与那国島では、勉強ができることよりも島の暮らしの中で大事なことがたくさんあります。

島のコミュニティで生きていくための力を、家族も地域もみんなで育てています。

一方、関西では進路選択の幅が広い分、学習面でのサポートや個別配慮への関心が高い傾向があります。

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生活の中にある「作業の価値」そのものが、地域によって違うのです。

だからこそ、ゆいまわるはその町が何を望んでいるのかを聞くところから始めます。

同じ沖縄県内でも南風原町と嘉手納町では事業の規模もスタイルもまったく異なりますし、与那国と関西ではそもそも子どもたちが生きていく社会の前提が違う。

委託された内容をそのまま実行するのではなく、地域ごとに技術提供をカスタマイズしていく。毎年対話を重ねるから、毎年形が変わっていきます。

制度の入口は違っても、目指していることは同じです。先生の届けたい教育が、子どもたちに届くようにすること。

その実現の仕方を、地域と一緒に考えていくのがゆいまわるの学校作業療法です。

自分の地域で学校作業療法を利用・実施するには

学校作業療法に関心をお持ちの方へ、お立場ごとにご案内します。

保護者の方

保育所等訪問支援は、お住まいの地域に対応する事業所があれば利用が可能です。
まずは市町村の窓口や相談支援専門員にご相談ください。


自治体の方

地域の現状に合わせた導入方法をゆいまわるが一緒に考えます。
南風原町のような包括的なモデルもあれば、巡回相談から始めるスモールスタートもあります。まずはお気軽にお問い合わせください。


作業療法士の方

学校作業療法に興味のある方に向けて、研修や放課後ラジオなど、学べる場を用意しています。ぜひご参加ください。

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