横須賀市の公郷小学校と公郷中学校では、2025年11月から先生方と作業療法士がそれぞれの視点を持ち寄り、子どもたちの姿や授業での関わり方を一緒に考える取り組みを続けてきました。
5回目の訪問となった2026年8月に、公郷小学校の益山隆太校長先生と公郷中学校の河野和代校長先生、そしてYUIMAWARU株式会社代表の仲間知穂(作業療法士)が振り返りをしました。
小学校から中学校へ進む子どもたちを同じ視点で見るとはどういうことなのか。そして、それは子どもたちの9年間にどんなつながりを生むのか。先生方からお話をお聞きしました。
2025年11月に初回訪問。2026年4月に全体研修。5月と6月には実際の授業を見せていただき、子どもの行動の背景をお伝えする研修を2回重ねました。2026年8月の今回で5回目となります。
子どもたちを見ていて、「どうしたらいいだろう」と感じるのはどんな時ですか?

河野校長:目の前に現象があって、子どもが困っているなと感じます。困っていることをなんとか一緒に解決していこうと思うのですが、専門家ではない私たちには見えない、専門家だからこそ見える背景があるのではないかと思います。
結局、保護者の方とも「こういうことが起きています」と伝えることが多くなってしまい、「具体的にこういう視点で見るといいですね」とか「こういった関わりをするとよいですね」という具体的な対応はなかなか出てこない状態でした。
益山校長:いつもではないですが、授業の参加の仕方が気になったり、クラスのざわつきが気になることもあります。
1学年3~4クラスある学校なので複数の大人で見てはいるのですが、ではどうしよう、学年そろって何かやりたいけれど何を気をつければいいんだろう、というところで、具体的な手立てに行き着けないことがあります。
そういうときに作業療法士の方々から教えていただいたことをヒントにしながら集団全体を良くしていこうというところにつなげられるといいなと思っています。
これまでにも、学校で作業療法士と連携する機会はありましたか?
河野校長:横須賀市には巡回相談の制度がありますし、県立の支援学校も近くに2つあるので、依頼をするとすぐに来ていただけます。その生徒の行動を見て分析をしていただいたことはあります。
椅子の形が合わない、椅子にクッションのようなものを入れるといい、高さが合わない、上履きがこれではだめだ、ということを具体的に教えていただいて、なるほどと保護者と共有して改善した経験は本校にもあります。
今回は全体で研修をしていただいてお話を伺いました。
具体的な事例に対して、こういうケースの背景にあるものはこういうことなんだよ、と教えていただく。
今日お話しいただいた眼球運動のこともそうですし、五感ではなく七つの感覚といった知識自体も、みんなが持っていたわけではありませんでした。
益山校長:私自身は経験が少なくて、作業療法士というと病院などでリハビリを専門にやられている方というイメージでした。
今回のように作業療法士の方と一緒に子どもたちの様子を見ながら、授業や日々の関わりに活かせることを具体的に考えていけるというのは、正直知らなかったところです。
ゆいまわるの学校作業療法を経験してみて、いかがでしたか?
河野校長:今回は継続的に何回か訪問していただいて、職員全体の研修の一つになりました。
先生方全員の知見が少しずつではありますが広がったと思います。それが成果の一つです。
もう一つは届けたい教育です。
一人一人の生徒にはそれぞれのよさがあります。でも、それを発揮しきれない時がある。それは、その生徒の特性であったり、先ほどの七つの感覚であったり。
その生徒のよさとまだ身についていないものの両方があるとわかったうえで、どういう姿を目指していくのかを多くの教員が共有できる。
そのために、それぞれの教科の時間や休み時間、学校行事でも、こんなふうに関わっていこうねと。
具体的な生徒の姿、具体的な事例で、みんなが研修をでき、共有ができる。その時間を持てたのは大きかったと思います。

河野校長:1回目に来ていただいたときに、「授業でグループになったとき、こういう事例の時には役割を持たせてあげるといいんですよ」というアドバイスをいただきました。
それを意識しながら授業をするようにしたら、子どもたちも授業に積極的に参加できるようになりました。
これが専門家の先生に入っていただいて分析をしていただくことの良さだと、すごく感じました。
小学校と中学校が同じ研修を受けることには、どんな意味がありますか?
益山校長:小学校もできる限りのことはやって中学校へ、という気持ちはあるのですが、どうしても成長の途中の段階で中学校にお願いする、引き渡すようなことが多々あります。
小学校の子どもたちの多くが進学する公郷中学校の先生方と同じ意識で同じ研修を受けてというのは、子どもたちにとってプラスになる面が大きいのではないかと思います。
継続して同じ視点で見ていただけるという点で非常に価値のあることだと感じて今回お願いしました。
仲間:一つの場所にみんなで一緒にクラスデザインをしに来る。私も今回、実は初めてに近い経験です。ここでバトンをつないでいくのは一つ新しい知見だと思って見ています。

河野校長:中学校は特に教科担任制なので、いろいろな教員がそのクラスに入ります。国語の時間や数学の時間、部活動など、生徒が教員に見せる様子は様々です。
場面によって様子が違い、「なんでだろう?」と感じることはありました。作業療法士の皆さんの分析を聞くと、「この場面ではできたけれど、こっちの場面ではできなかったのは、こういう理由があったからなのか」と。
時間をかけながらみんなで情報共有をしてきました。11月にお話をいただいた生徒たちの様子についても少しずつ、その行動の背景が見えるようになってきました。
そこも大きいです。
横須賀市の小中一貫の施策の中で、「9年間で子どもたちを育てていこう」と、いろいろな形で一緒に検証したり一緒に話を聞いたりということを今、少しずつ行っています。その意味でも、今回の「おためしまちOT」は良い機会になりました。
作業療法士の訪問後に職員室で話されるとのことでしたが、職員室では、どんな話が出ていますか?

河野校長:うちは職員室で生徒の話がよく出ます。
分析していただいたことをもとに、経験の浅い先生もベテランもいる中で、それぞれが考えながらアプローチをして、「こんな様子だったよ」という情報共有が再び学校現場でなされます。
手探りでアプローチしていたのとは異なり、関わり方のベースができたことで、職員間で共通の視点を持てるようになりました。
見ていただいたクラスだけではなく、他のクラスや学年でも同じ視点で見ることで、生徒理解が深まったと感じます。
益山校長:小学校は大きな変化がこれからかなという気がしています。
担任やその学年の先生が子どもたちを見る視点は、今まで持っていなかったところを教えていただけているので、より広がっただろうなと。
職員室では、新たな視点で子どもたちの行動を理解する大切さを感じるようになった教員が増えてきました。
たくさんの子どもたちを見ていく中で、新しい視点が増えていくと、これから大きく変わるきっかけになるのかなという予感を持っています。
これから、どんなことができたらいいと思いますか?
河野校長:保護者の方も学校も生徒のために「どうしたらいいんだろう」と考えますが、具体的にこの生徒にはこういう手立てをしてみるといいですよというところまでアドバイスをいただける場に、学校だけではなく保護者の方も一緒にいられる。そういう機会があれば、もっと効果があるのではと感じます。
仲間:子どもの困りごとをマイナスに不安視して囲い込むのではなく、だからこそ街で一緒に育てるんだという視点で外とつながる、学年や学校が変わってもつながる。
そのつながりのところに私たちが安心・安全でつながれる役割として、専門家として街で関われたら、と今日はすごく感じました。
9年間を同じ視点でつないでいく

小学校で見えてきた子どもたちの姿が中学校でも同じ視点で受け取られる。公郷小学校と公郷中学校の先生方が同じ研修を受けられたことで、そのつながりが少しずつ形になってきているように感じます。
職員室で生徒の話が交わされ、見ていただいたクラスを越えて同じ視点が広がっていく。その広がりは、先生方がもともと持っていた力が発揮されていく過程なのだと思います。
お忙しい中、お時間をつくってくださった公郷小学校・公郷中学校の先生方、そして今回の機会をつくってくださった横須賀市教育委員会の皆さま、本当にありがとうございました!
